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全ての人に訪れてほしい:ニューヨークの911メモリアル・ミュージアム

更新日:2021年2月9日

2001年9月11日。ちょうど19年前。アメリカだけでなく世界をを震撼させる同時多発テロがニューヨークを中心に起こりました。


今は跡地の一角に超高層ビルも一棟建ち、公共交通機関のターミナルもでき、エリアは一変しました。今やかつてを思い起こすことができるのは跡地にできた911メモリアルと博物館の2つ。メモリアルは、ワールド・トレード・センターのノースタワー、サウスタワーを象徴する2つの滝から成っていて、その滝は地上レベルから地下に向けて水か流れるようになっています。滝は街の騒音をかき消し、亡くなった方々の追悼する聖堂の役目を果たしているとのこと。


このデザインが採用されたとき、一部の家族から反対が出たというニュースがありました。アメリカでは追悼碑は、犠牲者の存在を大きく見せるため、高く、大きくというのが一般的です。地下深くへ流れる滝というのは、犠牲者を低く見せるということで反対する家族が多かったようです。結局このデザインは採用されましたが、メモリアルや博物館の建設についてはこのようにいろいろ紆余曲折がありました。

メモリアルの滝の周りには、ツインタワーだけでなく、ハイジャックされ国防総省のあるペンタゴンに墜落した飛行機の犠牲者なども含め、全ての犠牲者の名前が刻まれています。ところどころ、家族や友人が訪れたのか、犠牲者の名前にバラやアメリカ国旗が刺してあります。びっしりと刻まれた名前を見て、およそ3千人といういかにたくさんの犠牲者がいたかというのを改めて認識させられます。

博物館は、犠牲者の家族と相談しながら、見たくないから展示しないのでなく、できるだけ忠実にありのままを伝える、という方針のもと展示内容が決められたといいます。


計画の段階でアメリカでいろいろ議論がなされ、その話をアメリカに住んでいるときに聞いていたので、あれから最終的にどうなったか確認したいという思いがあった反面、目を背けたいものを見たくないという葛藤もありました。


一万平方メートルもの面積を有するこの博物館。展示スペースはワールドトレードセンターの基礎部分が今も残る地下にあり、瓦礫から拾い集めた実物、写真、映像がたくさん展示されています。携帯電話に写真やビデオを撮る機能がまだついていない時代ですが、テロの瞬間や直後は多くのカメラがその様子を捉えていました。


展示は、テロの直前の2001年9月11日午前8時半ごろにブルックリンで撮影されたツインタワーの写真から始まり、テロを時系列で淡々と追っていきます。その後は、911の前に起こった関連する出来事、911直後の様子や出来事とその後のテロの影響を展示しています。


そのほか、ツインタワーの歴史、犠牲者を追悼する展示、実行犯や主導者のオサマ・ビンラディンなどについての展示もありますが、一番圧倒されるのは、瓦礫の中から拾い集めてきた様々なもの。ツインタワーの基礎部分や鉄筋部分、救助に行ったもののビルの崩落でぐにゃぐにゃになった消防のトラックなど。テロのスケールが感じられます。


こちらはワールドトレードセンターのプラザ階と地上階をつないでいた階段。ボロボロになりながらも、どうにか形をとどめています。


このほか、写真撮影が禁止されている、目を伏せたくなるような映像などを流すエリアもあります。


アメリカではテロの直後から何年も、アメリカがいかに正当で素晴らしいか、いかにアラブ人やイスラム教徒が敵なのかなど、はっきり白黒をつけて報道されることが多く、異常なほど「愛国心」で国が団結していました。


正直、この博物館の展示もそういう感じなのかなと思っていましたが、展示はニュートラルとまでは行かなくても、ありのままを伝えようという姿勢が現れていて、全体的によくできていると思いました。瓦礫から集めてきたスケールの大きい展示物が多くあり、テロの大きさ、残酷さが伝わってきます。この博物館の真上にワールドトレードセンターが建っていたかと思うととても複雑な心境になります。


テロをあまり覚えていない人も、リアルタイムでニュースで見ていて衝撃を受けた人も、どんな人にでも訪れて欲しい博物館です。


9/11 Memorial & Museum

180 Greenwich Street

New York, NY 10281

Desert Nature
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